じめじめとした梅雨の時期、気をつけなければならないのが食中毒です。食中毒の事故が一年で一番多く危険なのが6月~7月にかけての時期。梅雨に時期「食中毒の危険」となる理由は2つあります。
① 高温多湿な気候
食中毒になる黄色ブドウ球菌などの細菌は気温28℃湿度70%を越えると、食材に対し爆発的に菌が増殖する為この時期特に増えやすいのです。
② 免疫力の低下
暑くなると人間の体力が落ち、免疫力が低下した体内に食中毒の原因となる細菌が入ってきた場合、胃の中で殺菌が追い付かず食中毒になってしまうのです。
どのような食材が食中毒になる危険性があるのか
食中毒というと消費期限の切れた食材、腐った食材、カビの生えた食材で食中毒になると思いがちです。実はこの時期、腐っても無く、カビも生えてなく、変な臭いもしない、見た目は何も変わらないから大丈夫だ!とうっかり食べてしまうと食中毒になってしまうことがあるのです。
そこで今回は、ついうっかりやってしまう3つの食材が、菌の増殖を招き食中毒になってしまう危険性などを解説していきます。
食中毒の危険性のある食材:カレーの作り置き
カレーを作り置きして翌日や翌々日に食べる方が多いと思いますが、必ずしもこの食材が食中毒になるというわけではありません。実は作り置きのカレーの保存方法を間違えると食中毒の危険性が出てきます。作り置きのカレーの保存方法を3つの方法に分けて比較してみます。
- 熱いまま冷蔵庫に入れて保存する
- 冷ましてから冷蔵庫に入れ保存する
- 鍋のまま常温で置いておく
食中毒の原因となる菌増殖の条件
- 気温28℃湿度70%を越えると爆発的に増殖
- 食中毒の危険性のある菌は1g当たり10万個以上
- 食中毒菌は30℃~50℃の間で最も増殖する
この条件から、以上の3つの方法で保存した場合、24時間後に食中毒の原因となる菌がどのくらい増殖するのかを実験してみると、
熱いまま冷蔵庫に入れて保存する
作り立て時点では1g当たり約5000個➡24時間後は約6600個(約1.3倍)に増殖していきます。
冷ましてから冷蔵庫に入れて保存する
作り立て時点では1g当たり約5000個➡24時間後は約7万4000個(約15倍)に増殖していきます。
鍋のまま常温で置いておく保存する
作り立て時点では1g当たり約5000個➡24時間後は約2600万個(約5200倍)に増殖していきます。
作り置きのカレーを鍋のまま常温で置いておくと、4~5時間で10万個/1gに達し食中毒になる危険性があります。例えば晩御飯にカレーを作り翌朝までそのままの状態で保存すれば十分に食中毒になりやすいと言われています。
また、この約2600万個という菌数では特に見た目や匂いもわかりません。加熱すれば殺菌できそうに思えますが、かなりの菌は死滅すのですが食中毒を起こす「ウエルシュ菌(ジャガイモやニンジンなどの食材に付いている常在菌)」は100℃で4時間熱しただけでは死滅しません。
さらに、食中毒菌は30℃~50℃の間で最も増殖するという条件から、この鍋のまま常温で置いておく保存しておく時間内で30℃~50℃の時間が非常に長いことから食中毒の菌が一番増殖し危険性が高くなるわけです。
どうすれば食中毒の菌が増殖しなくなる?
このことから、カレーの作り置きは冷ますことに時間を掛けなければ食中毒にもなりにくいという事です。ただし、鍋が熱いまま冷蔵庫入れると冷蔵庫が故障したり、他の食材が傷んでしまう可能性もあるので、
- 鍋敷きをする
- 濡れたタオルで包んで冷蔵庫に入れる
- 保存容器などに小分けする
といった方法をとり、早く冷ましてあげることで菌が増殖しにくくなり食中毒の危険性も低いのです。
食中毒の危険のある食材:飲みかけのペットボトル
基本的に、フタを開けていないペットボトルの中にはほとんど菌は入っていません。ところがフタを開けて口をつけると皮膚についている黄色ブドウ球菌などの食中毒菌が入ってしまい飲料水の中で増殖すると食中毒の危険性が出てきます。
そこで、皆さんがよく飲むペットボトルの中で、水・緑茶・麦茶・オレンジジュース・カフェオレ・コーラの6種類を、フタを開けた後、口をつけて気温28℃・湿度70%の部屋に置き、24時間計測するという実験を行いました。黄色ブドウ球菌などの食中毒菌は、1g当たり10万個以上で食中毒の危険性があるのでそれを踏まえて見てみると驚きの数字が出ました。
少ない順から説明すると・・・
緑茶
飲みたてでは1g当たり約600個➡24時間後は約490個に減っていきます。これはお茶の中にはカテキンやビタミンCなどに抗菌作用が働き菌も少なくなってしまうという結果です。
水
飲みたてでは1g当たり約600個➡24時間後は約1100個に増殖しています。
麦茶
飲みたてでは1g当たり約600個➡24時間後は約3700個に増殖しています。水よりも菌の数が増えている原因は、糖分やたんぱく質が多いほど菌が増えやすいということです。また麦茶は穀物で作られていますので、炭水化物=糖分なので炭水化物をエサにして菌が増えていると考えられます。
コーラ
飲みたてでは1g当たり約600個➡24時間後は4000倍の約249万3800個に増殖しています。実は、菌のエサとなっている糖分は500mlのペットボトルの中に角砂糖15個分入っているために、菌が爆発的に増殖してしまいました。
オレンジジュース
飲みたてでは1g当たり約600個➡24時間後は約250万3900個に増殖しています。オレンジジュースには砂糖が入っているわけではありませんが、含まれている果糖は細菌から見れば同じ糖分なのでコーラと同じように菌が爆発的に増殖してしまいました。
カフェオレ
飲みたてでは1g当たり約600個➡24時間後は約517万5900個に増殖しています。カフェオレは糖分に加え、菌のエサとして牛乳のたんぱく質が沢山入っているので菌が爆発的に増殖する原因とも言われています。
いずれにせよ、ペットボトルに菌を増殖さないためには、口を付けずにコップに移して飲むか、冷蔵庫に入れて保存しておくことが菌の増殖を抑えるポイントとなります。
これから迎える夏場、ベッドの上に飲みかけのペットボトルは危険です。決して置いたままにしないよう注意しましょう。
食中毒の危険のある食材:手作り弁当
手作り弁当の中でも、定番の食材として(梅干しおにぎり・海苔巻きおにぎり・唐揚げ・サラダ・ミニトマト・キューリの酢の物)6品を朝作り、昼12時に食べる事を想定。お弁当を作ってから気温28℃・湿度70%の部屋に6時間保存した場合、菌がどれくらい増殖しているのか、おかずごとに計測する実験を行いました。
菌が少なかった食材と、菌の多かった食材を2つに分けると次のようになります。
菌が少なかったお弁当のおかず
- キューリの酢の物
- 唐揚げ
キューリの酢の物は、酢は強い抗菌作用を持っているのでキューリに付く菌が増殖しないという効果があります。
唐揚げは揚げ物で170℃の高温で調理されているので、元々付いていた細菌は死滅してしまいます。その後は衣が付いているので衣が外部から来る菌の侵入を防いでくれるのです。基本的に揚げ物の食材は食中毒が起きにくく危険性はありません。
菌が多かったお弁当のおかず
- ミニトマト
- 海苔巻きおにぎり
- 梅干しおにぎり
- サラダ
ミニトマトはどうして菌が多くなった?
ミニトマトは、付いているヘタの部分にポイントがあり、
- ヘタ有りでお弁当に入れた場合➡約1100万個の菌が増殖します。
- ヘタ無しでお弁当に入れた場合➡約10個の菌に留まっています。
これは、ヘタを顕微鏡で見ると非常にデコボコしており、ここに菌が付いてしまうと中々洗っても取れない性質がありとても危険です。ヘタは彩も良く食べやすいという理由から皆さん付けたままお弁当に入れていますが、ヘタを取って入れた方が食中毒の危険性はないようですね。
海苔巻きおにぎりはどうして菌が多くなった?
おにぎりは基本手で握ります。人の手には黄色ブドウ球菌が多く付着しているので、その菌がご飯に付き、ご飯の糖分と水分を利用して菌がどんどん増殖してしまうというものです。
この場合、ラップなどで握れば直接触れることが無いので、手からの菌の汚染は防ぐことが出来ます。手を満遍なく洗っても菌をなくすことは不可能です。ラップなどで握れば食中毒の危険性はありません。
海苔は、おにぎりと海苔の間が蒸れて水分が多くなってしまいます。ここに菌が付いて増殖をし始めるのです。この時期は、海苔は別に持っていき食べる直前に巻くようにした方が良いでしょう。
梅干しおにぎりはどうして菌が多くなった?
梅干しおにぎりは殺菌作用があるように思えますが、実は梅干しの殺菌効果はおにぎり全体ではなく、梅干しの周りだけしか殺菌作用はありません。
この場合は、ご飯の中に梅干しを細かく刻んで全体を混ぜ合わせた方が、殺菌効果が全体に満遍なく行きわたります。これがおススメですね。
サラダはどうして菌が多くなった?
サラダの中にブロッコリーを入れた場合は要注意です。窪みの所に水分が残ってしまい水切りが不完全となってしまいます。汁気が残っていればそこに菌が増殖する原因となってしまいます。また塩分の高いドレッシングの作用から、野菜の水分が染み出てきますのでそこで菌が増殖するといったことが起きて危険です。おススメはドレッシングは小さな容器を持っていき、食べる時にかけたほうが安全でおいしいと思います。
このことから、美味しい料理や飲料水も見た目では分からなくても、気温や湿度、そして保存方法をしっかり守っていれば食中毒の危険性は抑えられます。これからの暑い季節、皆さんの体の免疫力を低下させないよう、日頃から健康管理に十分注意していくこともお忘れなく。