お寺の墓参りの作法や仕方はその宗派によって様々です。しかし仏教の基本的な墓参りの仕方を知ると知らないでは大きな差が出てきます。
墓参りはこれから春彼岸・お盆・秋彼岸や先祖の年期法要など、何度となく家族揃って出かけることもあるでしょう。
例えばお盆にお墓参りをする理由は、お盆には亡くなったご先祖様が年に一度あの世から帰って来る時、そのご先祖様をお迎えに行くという理由からです。そしてまた、お盆が過ぎたとしても、これから秋彼岸や来年度の春彼岸、先祖の年期法要やご親戚の納骨供養など幾度となく足を運ぶかもしれません。
お寺の作法や正しい墓参りの仕方を知っていればきっと得した気分になるはずです。このサイトでは、宗派問わず正しいお寺での作法と墓参りの仕方にフォーカスしてみました。
あなたのこれまでの墓参り作法と比べながら、もう一度確認する価値ありそうですよ。
お寺の作法、初めて入る時の正しい参拝の仕方
お寺には必ず山門があります。山門を通らずお墓参りに直接行く人をよく見かけます。あれっておかしいですよね。山門は本来お坊さんにとっての修行の場の入口、そこから教えを学んだりするという意味がありますので、山門手前で必ず一礼してから入りましょう。
お寺の作法、参道の正しい歩き方
お寺の作法の中で迷うのが参道の歩き方。仏教の場合は左右真ん中どこを歩いても大丈夫です。
お寺の作法、服装
お寺の作法で服装も気になるところです。基本お寺やお墓に出かけるときは派手で露出度の大きい服装は自粛しましょう。
お寺の作法、境内での写真撮影
お寺の作法の中で、写真撮影をしていけない所があります。基本的にご本尊が飾ってある本堂内は撮影禁止です。それ以外でしたらお寺の境内での撮影はOKです。
お寺のお墓参りの仕方
お墓参りの流れ
お墓参りをする場合、以下のような流れで参拝しましょう。
掃除 ➡ お供え ➡ 合掌 ➡ 帰り支度
お墓参りの仕方:墓掃除
お寺の参拝が終わったらお墓参りになります。その前にご先祖様の墓掃除をしましょう。一般的には、ぞうきん を持っていきますよね。しかし、墓参りの仕方で墓石の掃除にやっていけないことが2つあります。
それは、タワシでゴシゴシと墓石を擦ることと、洗剤を使うことです。お墓の石は、製造工程の段階で線香ヤニ・雨・泥がつかないように表面にコーティング加工が施されています。
洗剤をつけたタワシでゴシゴシ擦るとすると、簡単に傷がついてコーティングは剥がれてしまうので絶対にやめましょう。知らぬ間にシミや苔ができてしまったら大変です。
そんな理由から墓石を掃除する時は、きれいな雑巾で亡くなった両親の背中を流してあげるような気持ちで「語りかけながら」磨いてあげることが作法として良いとされています。
雑巾・歯ブラシの正しい使い方
1、雑巾を使う注意点として、墓石に水をかけるとご先祖様に失礼との説もあることから、固く絞った新しい雑巾で水拭きをしましょう。間違っても使い古しのものでお墓は掃除しないで下さい。先祖にとって失礼にあたりますのでくれぐれもご注意を!
※因みに、「雑巾」は雑な布と書きます。仏事に雑巾を使うと申し訳ないという事から、「雑巾」をもじって、清らかな布と書いて「浄巾(じょうきん)」という言い方をする場合もあるともいいます。
2、歯ブラシは、墓石に彫ってある文字の凹部分を掃除するときに使いましょう。
細かい作業ができてとても便利ですよ!
お墓に置いてある「〇〇家」の手桶は使ってもいい?
お墓の水場には、「お寺の名前入り(〇〇寺)」の手桶や「〇〇家」の手桶が置いてありますが、この「〇〇家」の手桶は勝手に使っても良いのでしょうか?皆さんも疑問に思うひとつだと思います。
仏教の精神にも通じるのですが、「分け合い(シェアをする)」というのが共通とされています。例えば「佐藤家」と書かれた桶は、佐藤家のものではなく佐藤さんからお寺へ寄贈した物(頂き物)なのです。
シェアリングエコノミーのひとつとしてお寺の物は皆で使うという観点から誰が使っても良いのです。どうしても心配な場合は、お寺の名が入ったものを使うといいでしょう。
お墓参りの仕方:お供え
お墓のお供えに欠かせないものは線香とお花、そしてお供物です。
最近では、お墓に飾るお花は菊をはじめ洋花など制限なくお供えができるようになりました。毒のある植物だけはお供えには適しませんが、薔薇の花もトゲを取ればOKの時代にはなりましたよね。
ご先祖様が好きだったお供え物は遠慮なくお供えしましょう。
墓石の間にある凹んだ所は何?
墓石の花立と花立ての間に凹んだ所があると思いますが、これっていったい何のためにあるのでしょうか?墓地を見渡してみると、まれに和菓子やいろいろなものが入っている場合があります。
実はこれ、「水鉢」と呼ばれ、水をお供えする所なのです。ひしゃくを使ってなみなみと水で満たすのが良いとされており、仏教では水はこの世とあの世を繋ぐ「聖なるもの」と考えられています。
水鏡になみなみと水をはることにより、ご先祖様が姿を映してくれるかもしれないと言われています。因みに、「水鉢」がないお墓の場合は、故人が愛用していた湯呑などで代用した方が良いでしょう。
墓石に好きな言葉(文字)を書いてもいいの?
墓石というと昔から「〇〇家先祖代々之墓」と書いてあるのが一般的でした。最近では洋型墓石も増え、宗派を問わない霊園などでは墓石正面に好きな言葉を彫ってある所が目立つようになってきましたが、これって決まりはあるのでしょうか?
基本的にお墓というのは亡き人を偲ぶ場所であり、その人を思わせる言葉があるのは良いことです。特に「愛」という文字を入れているのを多く目にしますが、この言葉は要注意です。
実は、仏教では「愛」の捉え方は、「愛欲」などの意味であり、愛情や美しい愛を表すのであれば「心愛」など愛の使い方を制限するような表現にした方が良いと思います。
墓前のお供えの仕方に決まりはあるの?
生前、故人が好きだったものをお供えするのはどなたでも知っている事で、お酒が好きだった故人には「日本酒」「焼酎」「ビール」が多く、その他には「和菓子」「果物」などお供えしますが、あなたはどんな方法でお供えしていますか?
亡くなられた方(ご先祖様)は、基本的に線香やお花、そして好物の物のなど香りの有るものを召し上がります。特にお酒の場合、蓋や栓をしたままお供えするのはよろしくありません。蓋や栓をあけてお供えするのが正しい墓参りの仕方になります。
但し、中には墓石に好物だったお酒をかける方がいますが、お酒の糖分で墓石が傷んだり虫が寄ってきますので、これだけは絶対にやめましょう。
お墓参りの仕方:合掌
正しい線香の火のつけ方・消し方とは?
線香の火のつけ方消し方には、昔から様々な意見や議論がされてきました。ここでその特別な方法を紹介します。
線香の束のまま火を点けようとすると外側ばかり燃えてしまい内側には火が点きにくい。こんな場合には束のお尻の真ん中を少し押し出します。すると先端部分で真ん中の芯が飛び出す形となり、火が満遍なく付きやすくなります。
線香の火を消す場合、やってはいけない事とは?
墓参りの最後、線香に火をつけたあと消す場合 口の息で消す ことは厳禁です。お寺の作法上、口の息は仏教でいう 穢れ に値します。
特にお供えする物においても、最大限その物を清めてから穢れがつかないように配慮をしお供えをするのです。その中でも最も穢れが付きやすいのはやはり「口の息」です。
これから供える線香そのものを汚してしまうということから、線香は振って消すか手であおいで消すのが正しい作法となります。線香はあおって消すようにしましょう。
合掌の仕方にも作法があるの?
次に合掌の仕方ですが、自分の目線よりも墓石が高い場合は立ったままで合掌しても大丈夫です。しかし最近では墓石もコンパクト設計によってかなり低い墓石があります。その場合は しゃがんで合掌 するようにしましょう。
これは背が低い墓石の場合、立ったまま合掌すると見下ろした形となりご先祖様に失礼になるからです。人間は見上げることにより、自然と心の中から敬意が生まれてきます。
そういった意味から、腰を下ろして墓石を見上げる形が良いとされています。但し、腰や膝が悪い場合は無理しないようにして下さい。
お墓参りの仕方:写真のSNS投稿
最近では、ほとんどの人が常にスマホを持ち歩いています。なかには墓参りを終えた記念にと、スマホで写真を撮る人も多く見受けられます。またその撮った写真や動画を、ブログ・Twitter・インスタ・Facebookなどにアップする人も増えてきましたね。
このお墓の写真投稿については、基本的には全く問題はありません。ただお墓の背景など周辺の撮影だけは注意をしてください。お墓には墓石や塔婆などに、戒名・施主名、命日など、個人情報がたくさん刻み込まれています。
なるべくそういうものが映らないよう工夫しながら撮影してください。自分のお墓のみを写して載せる ということが墓参りのマナーや作法にもなります。
お墓参りの仕方:帰り支度
墓参りが終了したら、帰る前にお供えした食べ物だけは持ち帰りましょう。お供え物をそのままにしているとカラスや野良猫に荒らされて汚くなってしまいます。
持ち帰れない場合は、お墓の前で皆さんで食べても大丈夫です。先祖様も家族の一員です。きっと一緒に喜んでいると思いますよ。
お墓参りから帰宅した時の清め塩は振った方がいい?
清めの塩は、お墓参りだけではなくお葬式の時も振らなくていいのです。お葬式の帰りに塩をまくのは、じつは仏教ではなく神道由来の考え方。
もともと日本人は死を穢れとみる文化がありました。ですのでお葬式など、死が自分に乗り移ってしまうのではないかというに恐れから、塩をまいて清めるという習慣ができたと言われています。
そもそも仏教では死が不浄なものだという考え方がなく、仏教のお葬式に出た場合など清め塩を一応もらいますが必要ありません。よって、お墓でお墓参りをした時も、死者の穢れを引きずってきたわけではないので、当然振らなくてもいいのです。(※宗派により異なる場合があります)
仏壇参りの間違いやすいポイント
お墓参りに行ってきた後、ご先祖様を家に招いての仏壇参り。実はこの仏壇参りにも間違った作法をしている人が多くおります。お盆やお彼岸に限らずこの機会ですのでチェックしてみましょう。
仏壇に供えるお供物の熨斗はどっち向き?
よく仏壇前に、熨斗の付いたお供物を供える場合がありますが、熨斗の方向はどっちが正しいのでしょうか?相手にあげるんだから仏壇に向けるという考え方もあります。
ところがどの地方においても、お供え物の熨斗は「自分向き」に置きます。(※宗派により異なる場合があります)
お供物と言うのは、贈り物(プレゼント)になります。この贈り物で亡き方をお飾りした姿をこちらに向ける事で、より敬意をはらうことが出来るのです。
リンを鳴らすのは手を合わせる時?
皆さんは手を合わせる前にリンを鳴らしていませんか?ついついお参りをしたらリンを鳴らすのが一般的と考えがちですが、実はこれ間違いなんです。
リンは「お経を唱える時に音頭をとる道具」であり普段は鳴らしません。リンを鳴らすことによって故人の供養になっているとかと言えばそれは何もありません。(※宗派により異なる場合があります)
リンは「般若心経」など「お経を唱える時」にだけ鳴らしましょう。
お寺での作法と墓参りの仕方をまとめ
お寺での作法や墓参りの仕方には、元々ご先祖を敬う感謝の気持ちから、自分の生き方や将来の進む道を司ってくれるという意味が込められています。
自分の子供や、孫の代までこのお寺の作法や墓参りの仕方を伝承していく意味もあります。死は穢れで汚いというイメージが未だに強く、汚い雑巾や使い捨ての自分の歯ブラシを代用したりして墓掃除に来られる人が多いようです。しかし、その今までの考え方は間違っていたかもしれません。ご先祖様は今のあなたたちの命の源でもあります。
感謝の気持ちを大切に考えるならば、全て新しい物での掃除やお飾りをしてあげるというのが大事になってくると思います。
決してお寺やお墓、そしてご先祖様を汚いといった感覚で、間違った作法やマナーにならないよう気を付けたいものですね。
是非参考にしてみて下さい。少しでもお役に立てたら幸いです。