間もなく5月。5月と言えば男の子の端午の節句で子供の日。実際に和菓子屋さんに行ってみると緑色の葉っぱの柏餅が売られています。
しかし別の和菓子屋さんに行ってみると茶色の葉っぱの柏餅が売られています。この柏餅の葉っぱの色が緑色の葉っぱと茶色の葉っぱの二種類が売られているのですが何か意味があるのでしょうか。
今回は、端午の節句に食べる柏餅、同じ柏餅なのに葉っぱの色が緑色の葉っぱと茶色の葉っぱに分けられている意味について簡単に紹介したいと思います。
柏餅の葉っぱの色の違いは、柏餅の誕生に深い関係がある
柏餅の誕生は、江戸時代中期からでした。
この頃、5月5日の端午の節句には「身の安全とたくましい成長を願い」鎧や兜を家の中に飾っっていました。
また、激流を上る鯉のように出世してほしいという親の願いを込めて鯉のぼりを上げ、男の子の出世や成長を願う様々な縁起をかつぐようになってきました。
その子供の日のお祝いにと柏餅を食べる事もそのうちの一つになっていました。
柏餅を食べることがなぜ縁起担ぎなのか
柏餅の葉っぱは柏の木の葉っぱを使っています。
江戸時代の人達はこの柏の木の葉っぱは枯れても新芽が出てくるまで落ちないという特徴を見つけました。
そこで「子どもが生まれるまでは親が死なない=家系が途絶えない」という縁起担ぎから柏の葉っぱで包んだ柏餅を食べるようになったと言われています。
当時の柏餅は、全て緑色の葉っぱでした。
柏餅の葉っぱが緑色から茶色の葉っぱに変わった大きな理由
それまで柏餅の葉っぱは緑色でしたが、明治時代に入るとその柏餅を包んでいた葉っぱの色が茶色に変わりました。
明治時代になると外交が盛んになり日本は海外の文化をどんどん取り入れて行きました。しかしこの頃非常に困る事が起き、それまでの日本の暦の旧暦から西洋の新暦を取り入れた事で暦に1カ月のズレが生じました。
そのため、旧暦の5月5日は新暦に直すと6月上旬となるのだが、5月5日は動かせないため1ヵ月前倒し(旧暦の4月上旬)となってしまいました。
そんな中、大変困ったのは柏餅を作っていたお店でした。なぜなら1カ月前倒しで季節的に早くになったことで柏餅を包む葉っぱが育っていなかったのです。
本来であれば柏餅に使われる葉っぱは6月になると約20㎝まで成長する所、新暦の5月では約10㎝しか育たず、柏餅を柏の葉っぱで包めなくなってしまいました。
そこで6月に育った緑色の葉っぱを保存して来年度に使用しようと考え、柏の葉っぱを蒸して殺菌し乾燥させることで長期間保存を考案。
だが、蒸した後の葉っぱの色が緑色ではなく茶色に変わってしまった為、仕方なく茶色の葉っぱを使うことになりました。
このような理由から、明治時代から現在まで約120年間この茶色の葉っぱが柏餅の葉っぱとして定番になったといわれています。
柏餅の緑色の葉っぱは今なぜあるのか
茶色の葉っぱが定番だった柏餅が、今なぜ緑色の葉っぱも出てきて使用されてきているのでしょうか。
それはここ20~30年の間に、飛躍的に真空パックの技術が進んできた為、緑色のまま葉っぱを長期間保存できるようになりました。
これにより、緑色の葉っぱの柏餅も作れるようになってきたのです。
そんな理由から、従来の茶色い葉っぱのイメージも強く需要があり、茶色の葉っぱと緑色の葉っぱの2種類の柏餅が販売されるようになったといわれています。
柏餅の葉っぱも、どことなく緑色の葉っぱの方が新鮮味があるように思えます。しかし、保存技術の進歩から
「緑色の葉っぱが最新の保存方法のもの」と、
「茶色の葉っぱが昔から取り入れていた蒸して保存していたもの」に分けられるという結果論になったわけです。
いずれにせよ柏餅は子どもの出世や成長を願う縁起物です。この柏餅の葉っぱの色の違いが、歴史の発展に関係していた事を、新しい子どもたちに教えていくことも重要な1つになりますね。