何かと慌ただしい年末年始。正月を迎える準備に追われ、正月三が日を過ぎてもその片付けに追われる日々が続きます。
日本人として正月は伝統行事の一つですが、そのしきたりを知らずに続けてきた方も多いのではないでしょうか。
正月飾りをしたものの片づけはどうしたらいいのとか正月を終えてからのしきたりも疎かにはできません。
今回はそんな正月を過ぎてからも恥をかかないお正月飾りや正月のしきたりについて「本来はこうだったんだ~」と感じる点をまとめてみました。
正月のしきたり:年賀状
日本人は正月になると新年のご挨拶として年賀状を書く人も多いと思います。最近ではその年賀状を書くのが面倒臭いと正月の挨拶はメールで済ます方も多くなり、郵便局で販売する年賀はがきの売上げも激減しているとニュース等で大きな話題となりました。
しかし正月の年賀状が全く無くなったわけではなく、この年賀状も日本の文化としてこれから新たに書いてみようかと思う人も少なくありません。
そこで、新年を祝う言葉として「謹賀新年」「賀正」「迎春」「あけましておめでとうございます」の4つの言葉をよく聞きますが、実はどれでも同じではないこと知っていましたか。
この4つの言葉には、どれも新しい年の変わらぬお付き合いをお願いする年賀状にふさわしい言葉なのですが、目上の方に送る年賀状には必ず敬う言葉を入れるのがマナーとなります。
しかしながら「謹賀新年」「賀正」「迎春」「あけましておめでとうございます」の中に敬う言葉が全く入っていないものがあるのです。
「謹賀新年」
謹んで新年を「賀」祝う・・・の意味で、「謹んで」が相手を敬う言葉となり目上の方に送る年賀状としては最適です。
「賀正」
「恭賀新正」を簡略化した言葉・・・「恭」➡ 敬う 「賀」➡ 祝う 「新」➡ 新たな 「正」➡ 正月 と表しています。
このまま使えば相手を敬う言葉が含まれているので目上の方に送る年賀状に書くにはふさわしい言葉になるのです。しかし簡略化された「賀正」だと敬うという言葉が消えてしまうので目上の方には失礼に当たるので使えませんね。
「迎春」
「迎春万歳」と使われていたものを簡略化した言葉・・・万歳は「いつまでも栄えて欲しい」という意味で、目上の人に対して使う言葉であり、迎春万歳そのまま使えば相手を敬う意味になりますが「迎春」と省略してしまう事で目上の人には使えなくなってしまいます。
「あけましておめでとうございます」
相手を敬う言葉がないので目上の人にはふさわしくありません。
「あけましておめでとうございます」と目上の人に年賀状を出してしまったら日本中の年賀状を回収しなきゃいけなくなり大問題になってしまいます。
「会社の上司」や「目上の人」宛に間違った使い方をしていないか、恥をかいていないだろうかもう一度見直してみてはいかがでしょうか。
正月のしきたり:しめ縄・鏡餅・門松の飾りつける期間
年末になるとしめ縄や鏡餅、門松など正月飾りをすると思いますが、なぜこれらを飾るのか皆さんはご存知でしょうか。そもそも正月とは、その土地や家を守ってくれる歳神様が天から降りてくるのをお迎えする行事。
- 門 松 ➡ 歳神様が迷うことなく家に来られるように目印として玄関前や門前に飾ります。
- しめ縄 ➡ 自分の家が歳神様を迎えるのに相応しい神聖な場所だと示すために玄関や勝手口に飾ります。
- 鏡 餅 ➡ 家に来てくれた歳神様が正月の間身を休める場所として飾ります。
この3つの正月飾りを飾りつけ始めてもいい日は、実は昔から正月のしきたりとして決まっており12月13日です。
この日は江戸時代まで鬼宿日(きしゅくにち)とよばれ、鬼が宿で休んでいるので邪魔されないという事から正月飾りなど準備するのに相応しい日となっています。
その為、日本の神社やお寺では縁起の良い12月13日から正月の準備を始め、縁起の良い12月28日まで飾り終えれば良い正月が迎えられると言われています。
正月のしきたり:正月飾りを取り外す日
年が明けると正月飾りを取り外しますが、この正月飾りを取り下げる日も決まっています。
しめ縄・門松
1月7日の(七草)が関東を中心に一般的に取り外す日とされています(※地域によって異なる)
元々全国的にしめ縄や門松など正月飾りは、旧暦で月が替わる1月15日に取り外していましたが、1662年に江戸ではしめ縄や門松に火が燃え移り、火事が相次いで発生した事から江戸幕府が1月7日に正月飾りを取り外すよう御触書を出しました。
それ以来、しきたりとして1月7日が正月飾りを取り外す日と制定されました。
鏡 餅
以前は全国的に1月20日に取り下げて食べると言う習慣がありました。(※地域によって異なる)
しかし江戸時代、徳川家三代将軍「徳川家光」が4月20日に亡くなり「20日は月命日」という事から関東では20日から1月11日に変更し11日は「いい日」と読める事から、縁起のいいこの日を「鏡開きの日」に制定し、1月11日の鏡開きの日までに取り下げればよいという事になっています。
正月のしきたり:しめ縄の形はどれがご利益がある!?
しめ縄には様々な種類・形・値段に違いがあり、毎年年末になるとホームセンターやスーパーで販売しています。一般的に販売されている正月飾り(しめ縄)には3種類あり、
- 牛蒡締め・・縄の先が牛蒡に似ている事から牛蒡締めと言われている。
- 玉飾り・・・縄を編んで輪っかにし、縁起物を付けているもの。
- 輪飾り・・・玉飾りと同じように縄を丸く編んでいるが玉飾りよりシンプルな作りのもの。
なぜ正月飾りで大きさや形の違う種類のしめ縄が有るかというと、そもそも正月飾りのしめ縄は出雲大社の境内に飾られているしめ縄を家庭用に小さくしたもの。
昔は家庭用でも大きな牛蒡締めが玄関先に飾られていましたが、玄関が引き戸だったため牛蒡締めでも邪魔になりませんでした。
しかし時代が移り変わると住宅事情が変化し、2枚の引き戸から洋風住宅に多い1枚の開き戸に変わったことから牛蒡締めではドアの開け閉めの邪魔!
そこで扉に直接飾れるようにと、大繩の部分を丸くして縦長の「玉飾り」や玉飾りとより小さくした「輪飾り」を飾るようになってきたのです。
しかし、値段を見てみると700円の安価なものから15000円の高価な物までありますが、実はどのしめ縄でもご利益に違いはありません。
700円でも15000円の物でも同じという事なので、自分の家に合ったものを選ぶと良いでしょう。
更に、「商売繁盛」や「家内安全」の木札が主流ですが、木札にないご利益をどうしても得たいという方は「結婚祈願」とか「安産祈願」とかご自分で紙に書いてしめ縄に付けても良いそうです。
正月のしきたり:鏡餅の飾り方
しきたり①飾る数
鏡餅を通常1つお飾りするのが一般的ですが、もし2~3個買って来たとしても複数飾っても良いのです。
また鏡餅の上にみかんを乗せているのをよく見ますが正式には「橙(だいだい)」です。
だいだいの実は一度実がなると2~3年地面に落ちない・だんだん大きくなるという意味合いから自分の家が大きく栄える、「だいだい」という名前から代々家が大きく栄えるとも言われています。
しきたり②飾る場所
鏡餅を間違ってもテーブルの上に置くことは止めましょう。神様を見下しているという意味合いから神棚やリビングの棚など自分の目線よりも上の方に飾りましょう。
また玄関に鏡餅を飾る方がおりますが、玄関は1番下座にあたるので歳神様は一番奥の部屋に飾った方が良いとされています。
しきたり③取り下げてからの食べ方
鏡開きの日、鏡餅を包丁で切ることはタブーです。
元々武士の世界では「鏡餅は神聖なもの」とされてきており、切腹を連想することから包丁で切る事を避けていました。
そのことから鏡餅を食べると時は包丁を使わず手や木槌で叩いて餅を割りましょう。鏡餅は神様が宿っていた所であり、食べることに意義があります。これにより「力をもらう」事から焼いても煮てもグラタンにして食べても良いとされています。
正月のしきたり:初詣の参拝の仕方
お参りする日
お正月の風物詩として初詣がありますが、お参りは元日になってから行けば良いと思っていませんか?実は、大晦日と元日の2日間行くのが正しいのです。
「初詣」というとお願いをすることだけと勘違いされている方も多いのですが、
- 大晦日 ➡ 1年間のお礼のお参り
- 元 日 ➡ 新年のお願いのお参り
という事で2日間お参りに行き、神様が天に昇る1月11日までに行うのが正式な正月のしきたりとなります。
よって大晦日と元日にお参りした方がいいのです。特に大晦日の11:50に1年間のお礼のお参りをし、少し待って元旦0:00にもう一度新年のお願いのお参りをするという「2年参り」が手っ取り早くていいようです。
お参りする神社数
また、いくつもの神社(伊勢神宮や明治神宮など)にお参りする事も可能です。但し、気を付けなければならないのは自分が住んでいる土地神様(近くの神社)にお参りを済ませてからその後、遠方の神社にお参りすることをおススメします。
お参りする順番
初詣でお参りする順番は、
鈴を鳴らす ➡ お賽銭 ➡ 礼拝(2礼2拍手1礼)
が正式です。
そもそも鈴を鳴らす意味は、神社の奥にいる神様を近くに呼ぶためであり、その後神様が近くにいらしたら神様のお供え物としてお賽銭を入れてからお願い事をするというのが正しい参拝方法となります。
更に、お参りのポイントとしてお賽銭を入れた後、拍手をする時は音を出来るだけ大きくしましょう。
拍手の時、片方の指をずらすことにより、普通に叩くよりも大きく綺麗な音になることで神様により願い事が届きやすくなります。
正月のしきたり:おみくじの引き方
神社によって異なる場合もありますが、一般的におみくじは上から順に大吉・中吉・小吉・吉・末吉・凶・大凶の7種類があるのですが、皆さんはおみくじを引いた後、どんなおみくじでも神社に結んで帰って来ていませんか。
実は
自分が引いたおみくじが悪い結果だと思った時は、持ち帰らないように神社に結んで帰る
自分が引いたおみくじが良い結果だと思った時は、良い運を家に持ち帰り財布の中に入れておく
そうする事でご利益が得られると言われています。
また、凶や大凶など悪い結果が出て神社に結ぶ時は、自分の利き手と逆の手だけで結ぶと、困難を成し遂げたということになります。
するとおみくじのランクが1段階上がり「大凶➡凶」に、「凶➡末吉」になると言われていますので悪い結果が出た時は是非試してみて下さい。
また悪い結果が出た時、もう一度おみくじを再チャレンジしたくなりますよね。これは1度どころか何度引いても構いません。
嫌な気分で自宅に帰るよりも良い気分で帰る方がより福が来ると言われておりますので、自分が納得するまで引いても良いそうです。
如何だったでしょうか。
元旦が過ぎても未だ初詣に出かけていない方、
年賀状を書いている方など参考になったのではないでしょうか。
そして正月飾りをこれから取り下げたり取り外したり、飾るよりも面倒な気もします。
しかし、これが日本の文化であり伝統を末の代まで引き継いで行かなければいけません。
今年も皆さんのご家庭にご利益がありますよう御祈願申し上げます。