皆さんはお寺の墓地に行った時、墓石の横に書かれている沢山漢字の並んだ戒名が刻まれていますが、この戒名の意味がわからないという方いらっしゃいませんか?
実はこの戒名は、お寺にお金「お布施」を支払って戒名をつけてもらうものなのです。そして戒名はお墓以外にも仏壇にある位牌にも書かれており、戒名は高い戒名と安い戒名が有る事って知っていましたか?
戒名について分からない、意味もわからない。なぜ戒名に高いお布施を払ってまで良い戒名をもらわなければいけないかなどわからない事が沢山あると思います。
今回はそんな戒名にまつわる疑問点をまとめてみました。
戒名の意味、文字の数が増えるとお布施も高くなるわからない問題とは
宗派によって多少の違いはありますが、そもそも戒名とは一言でいえば「仏様の弟子になった証として授けられる名前」です。
命が誕生した時は「佐藤一郎」とか名前を親に付けてもらいますが、他界すると「〇〇院〇〇〇〇居士」というような戒名がお寺から付けられるのです。
そもそも仏教でいう戒名は一般的に6文字で表し、戒名の値段「お布施」はこの6文字の戒名にどんな漢字が付くか、また何文字追加されるかによって戒名料「お布施」が高くなっていきます。
因みに、ここで言う「戒名」とは主に
- 天台宗
- 真言宗
- 浄土宗
- 禅宗(臨済宗・曹洞宗)
などの宗派に使用します。しかし、
- 日蓮宗・日蓮正宗でいう戒名は正式には「法号」
- 浄土真宗は「法名」
- 創価学会は「妙法」
と戒名の意味はほぼ同じですが、その宗派によって呼び名は変わります。専門家でないとわからない戒名の意味はこればかりでは有りません。
戒名の構成はとてもわからない!それぞれに意味がある
宗派によって多少変化しますが、戒名の構成は以下の通り「院号」「道号」「法号」「位号」に分類されています。ここでの意味については割愛します。
〇〇院△△ □□居士(大姉)
⇓
「院号」「道号」「法号」「位号」
戒名の意味には没年齢によって値段も大きく変わる!?
本来戒名はその付ける戒名文字の種類によって値段「戒名料」も大きく変わり、大別すると3種類に分けられます。
男性なら➡〇〇〇〇信士
女性なら➡〇〇〇〇信女
宗派や地域性によっても違いますが、没年齢が成人や独身男性など比較的年齢が若い人の場合などによく付けられる戒名です。
一番戒名料の値段が安く、東京の相場で言うと戒名料は約200,000円〜500,000円という価格設定です。地方に行くとこの戒名料も100,000円から300,000円という相場価格になります。
男性なら➡〇〇〇〇居士
女性なら➡〇〇〇〇大姉
こちらも宗派や地域によっても違いますが、没年齢が30代以上の方に付けられることが多い戒名です。
同じく東京の相場で言うと戒名料は約500,000円〜700,000円の間と言われています。地方に行くとこの戒名料も300,000円から500,000円という相場価格になります。
男性なら➡〇〇院〇〇〇〇居士
女性なら➡〇〇院〇〇〇〇大姉
最後に最も戒名料が高いのは、居士が付いた6文字の戒名の上に、◯◯院という「院号」がついた3文字が3種類ある戒名の中でも最高となります。
同じように東京の相場は約1,000,000円以上と言われています。地方では、800,000円以上が相場になります。
この他にも、「位号」は
- 7歳~15歳までの子供➡〇〇童子・童女
- 就学前の幼児2~3歳➡〇〇孩子・孩女
- 出産後間もない乳飲み子➡〇〇嬰子・嬰女
- 4ヵ月から流産した子供➡水子
・・・・・などの戒名があります。
例え高年齢で戒名を頂いたとしても、戒名料にお金をかけられない予算が噛み合わないなどの事情の有る方は没年齢に関係なく信士・信女の付いた戒名をもらう場合もあります。
さらに、この戒名は6文字だけではなく、社会的貢献度によって「院号」と「居士」の間に2文字ずつ先程の「道号」「法号」が追加される場合もあり、追加した文字数分「戒名料」も高くなるという仕組みです。
このように位号だけでもわからない部分が多いですよね。ここからは、戒名料「お布施」などお金に関わる疑問について紹介したいと思います。
なぜ「院号」が付いた戒名が最も値段が高くなるの!?
この院号というのは天皇が退位後の名前に「院」という漢字を付けたことで誕生した事で
例えば平安時代の
・嵯峨天皇が退位後➡嵯峨院
と呼ばれるようになりこれをきっかけに
- 後白河天皇は退位後➡後白河院
- 後鳥羽天皇は退院後➡後鳥羽院
と、昔の天皇は退院後「院号」をつけて呼ばれており、戒名の〇〇院はここから来ていたのです。また天皇以外にも江戸幕府を開いた
◆徳川家康の戒名は➡安国院殿徳蓮社崇道和大居士
そして明治時代「吾輩は猫である」で有名な小説家
◆夏目漱石の戒名には➡文献院古道漱石居士
と、身分や社会的地位の高い人の戒名に「院」という院号を付けるようになったのです。勿論この高い戒名はお寺のお坊さんが付ける事なので、誰でも高い戒名を貰えるというものではありません。
毎朝お寺の掃除をしたり、お寺の修繕寄付等で多めにお布施を支払ったなど、お寺への貢献度が高い人に付けられるのが一般的です。現在では、お寺に希望すれば貢献度が全く無くても、〇〇院と院号を付けた戒名を頂ける場合がありますが、それでは本来の戒名の意味がありません。
戒名料が高ければ法事のお布施も高くなるわからない現象とは
さらに戒名のランクは他界した後、法事などで支払うお布施の金額にも影響してきます。お寺や地域によって違いは多々ありますが、
法事の場合
- 〇〇信士・〇〇信女の場合➡約50,000円
- 〇〇居士・〇〇大姉の場合➡約70,000円
- 〇〇院〇〇〇〇居士・大姉➡約90,000円
と戒名の格差によって法事のお布施も変わってきます。ご葬儀の時に高い戒名料を支払っただけではなく、後々にも影響してきますので戒名は慎重に付けてもらった方が良いようです。
また、お布施というとどうしてもお金のイメージはありますが、お布施にもいくつか種類があり、例えば「身施」と言い労動で奉仕するのもお布施の一種です。
日頃、お寺で法要がある場合にお寺に出向き、お茶や料理の配膳を手伝ってあげるとかもお寺に対する貢献度がアップします。お寺に貢献した場合は、お金じゃない部分が加味されるということもあるのです。
戒名が高いと極楽浄土へ行けるの!?
戒名が高い場合でも安い場合であっても、極楽浄土の世界では段階に全く関係ありません。
あくまでも戒名とは、この世でその人がお寺とどういう関係であったのかに対して、お坊さんがその人の貢献度としてお授けする「送り名」なのです。
戒名はどうしても付けないといけないの!?
そもそも仏教徒は戒名をつけなくてはいけません。その理由は「戒名は仏様の弟子になった証として授けられる名前」なので、仏教徒になったら戒名は必ずつけなければいけないのです。
お葬式などで仏教徒でない人がお坊さんにお葬式を挙げてもらう場合は、必然的に戒名が必要となります。
「戒名要らない」と言ったらお坊さんはお経あげてくれない!?
もちろんのことですが、お坊さんはご葬儀には出席しません。ただ出張先で亡くなり、後日実家のある菩提寺で戒名を付け本葬をするなど、事情がある場合などは戒名に代わる「俗名」という形を取るとお坊さんは出席します。
その場合は、
「俗名・佐藤一郎之霊位」
という仮位牌になります。戒名は要らないとはいえ、厳密には仏様の弟子になる為あの世に修行に出かけるので、お坊さんも戒名のない方を簡単には送り出せないのです。
ただし、お坊さんを呼ばなくてもお葬式をすることは可能です。お葬式は挙げたいがどうしても戒名は不要なのであれば、お坊さん無しでお葬式をしたい旨を事前に担当する葬儀社に相談した方が良いでしょう。
近年「自由葬」と言って、仏教徒でも「戒名無し」「お坊さん無し」のお葬式が増えています。ご自宅に故人の好きだったお花を飾り、好きだった食べ物を供え、趣味の物や愛用していた洋服などをお飾ることで世界で一つしかない祭壇を作るのです。
また仏教でいうお経の代わりに、好きだった曲をピアノ演奏したり、親族を集めて思い出のビデオ映像を鑑賞したりと自由に故人を追悼する事も出来るのです。
ただこの形式は、一部には「お寺に高額なお布施を支払いたくない」「どうしてもお経が嫌い」などと理由をつけてお葬式を自由葬に切り替えてしまいがち。
注意して欲しいのは、もし予算的に自由葬にするのであれば決っして安価では済みません。生花代や人件費、そしてもしお寺にお墓を持っている場合など「納骨費用」は別途料金として掛かってしまいます。
ご葬儀に掛かる経費はほぼ一緒と考えても良いでしょう。自由葬についてはわからないことばかりだと思います。徹底的に葬儀社に聞いてみましょう。
お坊さんが付ける戒名文字はどの様に選んでいる!?
一般の方には中々わからないことですが、戒名の文字は亡くなった故人の職業や趣味、性格、人柄を反映して戒名文字を選び、お坊さんが一文字一文字付けています。
ご遺族の方々に亡くなった方のお話を約1時間位かけて徹底的に聞き取り、通夜の時間に間に合うよう戒名を決めているのです。
その付けて頂いた戒名は、誰が見ても故人のお人柄が理解出来るようになっており、その1つの例として皆さんも知っている有名芸能人の戒名の一部をご紹介します。
石原裕次郎の戒名➡陽光院天真寛裕大居士
この戒名は代表作「太陽にほえろ!」。そのお人柄が太陽のように温かい人柄という意味が込められ、院号の前に「陽光」を付けています。
美空ひばりの戒名➡慈唱院美空日和清大姉
院号の前に「慈唱」が付いていますが「慈しみの心を持って歌っていた」という意味で、ひばりさんのお人柄を表しています。
樹木希林の戒名➡希鏡啓心大姉
この字には、「役者は人の心を映す鏡」という想いが込められているようです。
このようにお坊さんは戒名をつける場合、遺族や子孫が戒名を見てもすぐ故人をイメージできるように文字を選んでいるのです。
生前に戒名をつけることってできる!?
そもそも戒名は、亡くなってから貰うものだと思っている方が多いようですが、本来「生きている間にもらう」のが正式なのです。実に約99%の人が、亡くなってから戒名を貰うものだと勘違いをしています。
仏教を信仰しているという事は仏教徒になった証で、当然ながら生きている間に戒名を貰うのが通常なのです。お坊さんも勿論のこと修行の期間にはそれぞれ通過点があり、その通過点ごとに戒名が増えていきます。
修行を始め見習いの期間中は名前のように二文字しか戒名を頂けません。しかしその後、修行を積み重ねるごとによって2文字ずつ戒名が増えていきます。
一般の方もそのお寺の和尚さんとの相談の中で、ある程度の段階を踏んで行けば個人的に戒名を授かることも出来るのです。もし授かった戒名が気に入らないという場合破棄する事はできませんが、お坊さんにこうしてほしいと要望し変更することは可能です。
実際に、一般の方の要望で途中から戒名を変えてくれるお坊さんは沢山いらっしゃいます。生前の内にわからない事があれば気軽に相談しておけばお得かも知れませんね。
死後に遺族が故人の戒名を変えたい場合は!?
大切な家族が亡くなり一度付いた戒名を変える事は出来ますが、比較的早い時期でないと後々不可能になってしまうこともあります。それは、黒塗りの本位牌を作ったりお墓に戒名を刻むのは亡くなった日から四十九日までと言われています。
もし早々と石塔や墓誌に戒名を刻んでしまってからでは、位牌や石塔など作り直す事になり大掛かりな作業となってしまいます。そうしたことから、もし一度頂いた戒名を変更する場合は、四十九日までの本位牌や石塔に戒名を刻む前なら可能となります。
自分で考えた戒名をつける事はできる!?
基本的に戒名とはお坊さんが付けるものです。しかし
「どうしても戒名に入れたい文字がある!」とか
「こういう文字が好きだったから・・・」という理由で事前に申し出れば叶うようです。
ただ戒名に使う文字は、その宗派の経典に載っている文字の中から選んでますので、戒名全部を自分で考えてつける事は100%出来ません。
余談ですが、同じ宗派でもカッコいい戒名を付けてくれるお寺様もあれば、「高いお布施を払ったわりには大した事ないなあ〜」というお寺様も存在します。
「お坊さんはセンスやで〜!」と言われるくらい、戒名をつける時などお坊さんはセンスが問われます。もしもセンスの悪いお坊さんだった場合は事前にお寺に通い、親しくなるなどして文字を選んでいくしか方法はありませんね。
家族と同じ戒名は付けられる!?
当然ながらそのお寺で授かった戒名は、例え大切な家族であっても全く同じ戒名は付けられません。その理由は、もし法事など行う場合「同じ戒名の人」が居ると誰の供養をしているのかが分からなくなってしまうからです。
その上、同じ道・同じ人生を歩んだ方は1人もおらず「その人がどういう生き方をしてきたか」を戒名の中に現わしているので、同じ戒名を付けるということは有り得ません。
しかし、全国でも同じ宗派のお寺も沢山有り、戒名をつける人もたくさんおります。戒名の文字はその宗派毎に同じ経典の中から選び、その中でも良い意味の漢字を抜粋して使用していますので、戒名が絶対かぶらないという事はありません。
ですが、檀家数の多いお寺などは、他の人の戒名とどことなく似てくるのは仕方のない事ですね。
元葬儀社からのアドバイス
戒名を付ける場合によく耳にすることですが、
「先祖がこの位の戒名を付けたから〜」
と言われ、同じ文字数の戒名を打診される場合があります。さらに、夫婦であれば
「先に旅立たれた旦那さんが10文字の戒名を付けたから、奥さんも同じ10文字で〜」
と要求される事もしばしばあります。
それはお坊さんも文字数のバランスはもとより、その家風なども考慮しておっしゃってくれているのですが、やはり戒名料も安くはありません。先に亡くなった人が「高い戒名」を付けると、次に亡くなった人の戒名はそれ以下には出来ず、先代と同じ位の戒名料を要求するお寺も少なくないのです。
そのため、葬儀費用などの予算も足りないのに「お寺に支払うお布施ばかり高くて葬儀社への支払いが出来ない」と悩むお客さんも沢山おられました。
はっきり言って葬儀に掛かる費用(葬儀社への支払い)は後払いですが、
戒名料を含むお布施(お寺への支払い)は前払いです。
極端に言うと、手持ち金がないと葬儀を挙げてもらえないのです。
特に、先に旦那さんが亡くなった時代は裕福な家庭環境であっても、今はどん底で貯金もなく「その日暮らし」の生活を送っている家庭になっているかも知れませんよね。
「素晴らしい戒名を頂いても支払うお金がない・・・」
そんなことがないよう、先に逝く方は子や孫の代まで引き継いで行くという事も考慮し、一番無難なランクの戒名を貰っておいた方が良いでしょう。サラリーマン家庭であれば戒名には院号を付けず、6文字でも立派な戒名であれば良いわけですので・・・。
時代によってそのつける戒名の漢字のイメージは変わりつつあり、
最近のお墓には「笑」という字を彫る人が増えてきました。
昔だったら絶対に考えられないことですが、今は「笑」という字は戒名に入っていませんが、ひょっとすると近い将来「笑」という文字が入った戒名が出てくるかもしれませんね。
今回は皆さんが戒名について難しくてわからない疑問についてまとめてみました。
いつかどこかでお役に立てれば幸いです。