皆さんは体の疲労回復やお肌の新陳代謝を促す睡眠のゴールデンタイムは、昔から「午後10時~午前2時」というのが睡眠の健康常識ということはご存知かと思います。
しかし、驚くことにこの睡眠のゴールデンタイムは「時刻には一切関係なく、睡眠を開始してから最初の4時間」と、今の睡眠の常識は変わってきているのです。
実は、今までの睡眠常識は「昔の健康常識」であり、今となっては間違いなのです。
また、寝付きを良くする飲み物は冷たい物より暖かい物、寝つきを良くする為に昼寝をしないなど、これも今となっては嘘であり、気にしないでいいことばかり。
昔と全然違うこの様々な睡眠に関する「今の健康常識」にフォーカスしてみました。
睡眠のゴールデンタイム、昔と今の違いとは
ではなぜ昔の睡眠のゴールデンタイムは「午後10時~午前2時」と言われていたのでしょうか?
それは、海外のある研究機関が1991年に「睡眠時間と成長ホルモンの分泌の関係」を調査したところ、確かに午後10時~午前2時の間に成長ホルモンが多く分泌されていました。
しかし、そもそもこの実験の就寝時間は午後10時〜午前7時に設定。
最初の4時間に成長ホルモンが多く分泌されていたという事実が、いつしか睡眠のゴールデンタイムは「午後10時~午前2時」と誤解され広まってしまったということなのです。
つまり、成長ホルモンの分泌は時刻に関係なく、寝始めてから最初の4時間が最も多いのです。もしあなたが午前0時に睡眠を開始するのであれば、午前4時までが睡眠のゴールデンタイムということになるわけなのです。
睡眠にまつわる今の健康常識は、昔の様に気にしないでいいことばかりです。
寝付きを良くする飲み物はホットミルクって嘘!?
昔から寝つきを良くする飲み物で、ホットミルクがいいといわれてきました。しかしこの常識は今となっては嘘で、間違った健康常識なのです。
今の健康常識としては、ホットミルクを飲むとかえって寝つきが悪くなると言われます。今までの睡眠常識からすると
赤ちゃんがミルクを飲んだら自然に寝る➡あったかいミルクを飲んで寝ている様子を見た➡大人もそうだろうと勝手に思い込んだ
という勝手理由からで科学的根拠は全くないのです。
赤ちゃんの場合は、ホットミルクが良いのではなく、お腹がいっぱいになったから寝ているだけなのです。
ホットミルクに限らず、温かい飲料は決して寝つきをよくする飲み物ではなく、むしろ寝つきを悪くするものという事が新常識となりました。
温かい飲み物がなぜ「寝付きを良くする飲み物」ではないのか!?
睡眠は、眠る時に体の内臓や脳の温度を下げる「深部体温」が下がることによって寝つきがよくなるというもの。
例えば、冬山で遭難した時に体が冷えてくると眠くなり、「寝るな!寝るな!」と必死に起こしてあげるシーンをご存知かと思います。
まさに
「体が冷える ➡ 眠くなる」
ということを表現しています。つまり逆に、
「体を温める ➡ 寝つきが悪くなる」
このことから、温かい飲み物を飲んで体を温めるよりは、むしろ真逆の「冷たい飲み物」で体を冷やした方が深部体温を下げることができて寝付きを良くするというものです。
寝付きを良くする飲み物が冷たい飲み物であっても、「冷たすぎる飲み物」や「氷」は刺激になるのでNGです。
「冷蔵庫の飲み物」か「常温の水」で十分かと思われます。
寝室の工夫で深部体温が下がり寝つきが良くなる方法とは
寝付きを良くする飲み物だけではなく、寝室にある工夫をすることによって深部体温が下がり、より寝つきを良くする方法があります。
寝室の環境は非常に大切であり、エアコンを使い寝室の温度をあらかじめ1℃だけ下げておくだけで、寝つきがよくなります。
今の時期、睡眠時のオススメ設定温度は、個人差はありますが男性では25℃、女性では27℃ぐらいが理想的で、良い睡眠を得ることができ寝つきもよくります。
但し、「朝までエアコンは絶対に消さない」が重要なポイントです。
多くの方は「3時間後にOFF」になるようにタイマーかける場合があると思いますが、これは今の時期「熱中症」や「脱水症」の原因なりますのでとても危険です。
そもそも寝汗をかいて眠っている場合は、「体」や「脳」が一生懸命体温調節しようとしている証拠であり「脳」が眠れてないということ。
寝汗をかいて寝ている=運動している
寝汗をかいている状況というのは運動しているのとほぼ同じで、自律神経が活発化していることに等しく非常に危険です。
特に高齢者が夜の就寝の間に「熱中症」で死亡するケースが多いので、エアコンを途中で消す事だけは避けましょう。
寝つきをより良くするポイント
「寝つき」をより良くするためには、
寝る前に「冷たい飲み物」を飲む
寝室の温度を他の部屋より1℃下げる
エアコンは点けたまま
皆様も是非実践してみて下さい。
昼寝をすると、夜寝つきが悪くなる・・・は嘘!?
昔から睡眠の健康常識で「昼寝をすると夜寝られない」といわれていましたが、これは今では間違った睡眠の健康常識です。今の健康常識では、昼寝をする方がむしろ夜寝つきが良くなるのです。
昼寝をする時間にもよりますが、実は1時間以上寝てしまうと、夜の睡眠時間が短くなったり、寝つきが悪くなったりします。しかし
30分以内に昼寝 ➡ 夜の寝つきがよくなる
そこで、本当に「30分昼寝をすると、夜寝つきが良くなるのか?」、「寝付くまでの時間にどれだけの差が出るのか?」を、実際に4人の方に検証してもらいました。
1日目は昼寝をせず、2日目は午後0時から3時の間に「30分間昼寝」をしてもらった結果、
30分➡15分
25分➡20分
30分➡15分
30分➡ 5分
と、4人全員が長短はあるが昼寝をしただけで寝付くまでの時間が短くなった事がわかったのです。
夜寝つきが悪くなる最大の原因は「脳のストレス」!?
人間は朝から16時間も活動していると、かなり脳にストレスがたまってしまい、更に睡眠のリズムも作れないのです。
脳が疲れる ➡ 睡眠のリズムが作れない ➡ 寝つきが悪くなる
寝付きを良くする飲み物と同じように、一度昼寝をして脳ストレスを軽減させ、睡眠のリズムを良好にさせることで、結果として寝つきがよくなるということです。
30分の昼寝をする前に効果的な飲み物とは!?
昼寝で「あと30分寝たい」と思っても、強制的に起きることが必要なのですが、スパッと起きることが出来ないという方も多いことでしょう。
そんな時は、昼寝する前に「コーヒー」を飲んでみましょう。
「コーヒー」の中にはカフェインという物質が含まれており、非常に強い覚醒作用を持っています。しかしこの作用が発現するまでに30分時間かかり、つまり飲んですぐには効かないので寝ることができるのです。
そして、寝てから30分後にはこのコーヒーの覚醒作用が発現するため、パッと起きられるということなのです。30分寝ようと思っても5分しか寝ていない、うたた寝状態でも30分経過していれば効果はあるのです。
こうすることにより夜寝つきが良くなるという結果になります。
90分の倍数で目覚ましを合わせると、スッキリ目覚めることができるのは嘘!?
昔から睡眠の健康常識で、90分の倍数で目覚ましを合わせるとスッキリ目覚めることができるといわれており、携帯のアプリにも有りました。
しかし今となっては間違った睡眠の健康常識で、今の健康常識は「90分の倍数でもスッキリ目覚めるとは限らない」とのこと。
人間は、浅い眠りの「レム睡眠」と、深い眠りの「ノンレム睡眠」という「睡眠サイクル」を繰り返していますが、平均的に言うと「平均90分周期」といわれています。
ところが実際には個人差が非常に激しく、その日の体調や人によって60分や70分、110分や120分とバラバラなのです。
「スッキリ目覚める」ためのオススメの方法とは!?
実は、寝ているときに目覚まし時計のアラーム音、大きな爆音で目覚めるというのは「強制覚醒」と呼ばれ「驚かせて起きる」起き方です。
この方法で、深い睡眠に入っている時いきなり起こされてしまうとビックリして驚かされるため、非常に恐怖心を覚え、血圧や心拍が一気に上がってしまう原因になります。
それにより「目覚め」が非常に悪い方法なのです。そこで、「目覚まし時計」の代わりに、ある物を使って毎朝スッキリと起きることが出来る物があります。
それは「テレビのタイマー」を使うことです。
テレビの音は普段聞かれているくらいの音量でよく、そのテレビの音を聞かせるとゆっくりと自然体で目覚めていくことができるのです。
実はここで大事なのは「テレビから流れてくる会話」であり「朝の情報番組」などは自分に関心、興味のある話題を提供してくれ、耳の機能はキチンと活きているので自然に目が覚めていくのです。
会話を聞き取ろうと徐々に脳が覚醒していくのがとても大切でこういった会話というのが非常に重要になってくるというわけです。
起きたい時間の10分前に「テレビ」や「ラジオ」のタイマーをかけたり、テレビが無ければスマホなどで「ボーカル入りの音楽」のタイマーをかけることがおススメ。
大きなポイントとしては、「歌詞がしっかりと聞き取れるような曲」が良く、徐々に脳が覚醒しスッキリと目覚めることができ、血圧や心拍の上昇も抑えられ高齢者には特におススメと言われています。
自分の脳の概念をどんどん新しい物に変えていく事が重要ですね。
枕・マットは自分の体にフィットするものがいい・・・は嘘!?
昔から睡眠の健康常識で「枕やマットは自分の体にフィットするものがいい」といわれていましたが、今となっては間違った健康常識なのです。
今の健康常識は、枕やマットは硬い方がいいのです。
これまでは、枕やマットが硬いと「体に悪い」「首がゆがむ」「肩がこる」などと言われていました。しかし、実際には硬いマットの方が、「寝ている途中に目が覚めにくい」というデータがあるくらいです。
逆に、寝た時にフィットする枕やマットは、かなり柔らかく寝返りができない場合が多い。その結果、熱がこもってしまい、それにより夜中に何度も目が覚めてしまうという現象が起きるのです。
実は人間の寝がえりは、一晩のうちに約10回から20回しますが、これにより血流を維持したり、体温を放熱させる「深部体温」を下げる上で非常に重要となっています。
しかし、やわらかいマットを使って寝ている場合は、どうしても熱がこもり寝つきが悪かったり、深い睡眠を得ることができません。そのため、是非硬いマットを使うのがポイントとなっており、マットを硬くすることで、深い眠りを得ることができるのです。
枕やマットには「低反発なモノ」や様々なタイプのものがありますが、選ぶ際は「体が沈みこみすぎず、しっかりと寝返りをサポートしてくれる物」を選ぶのが良いようです。
低反発の枕やマットは初めの「沈む感じが気持ちいい」とか「やわらかいのが気持ちいい」という快適さが理由で選ぶ方が多いようですが、寝返りした時に「へこみ」がまだ残ってしまっていることがあります。
それにより寝返りの時に違和感が出てしまうので、高反発の枕がオススメです。ホテルなどで枕がフワフワの場合は、バスタオルを何枚か重ねて使う方法も良いようです。
【東京疲労・睡眠クリニック院長 梶本修身】